そもそも国家資格って?

医療、看護に関する国家資格

 医療、看護に関する国家資格を紹介します。人の健康に関わる仕事ですから、様々な職種に資格が必要で、そのためとにかく種類多いのが特徴です。医師や看護師、歯科医師、薬剤師など、誰もが知っている職業から、あまりなじみのないものまでさまざまです。

●医師(医師法)
 医療従事者で、最も認知度が高い士業といえます。日本ではこれまで医師に係わることなく生活してきた人はいないでしょう。日本では医師のみが医業を行う事が許されています。医師になるには、医学部を出て医師国家試験に合格する必要があります。医師国家試験の合格率は80%から90%ほどで、医師国家試験よりも医学部に入学できるかが、医師になれるかの大きな分かれ道になります。もちろん国家試験の合格率は下がりますが、偏差値65くらいで入れる医学部もあります。

●看護師(保健師助産師看護師法)
 以前は女性のイメージが強い職業でしたが、看護婦という名称が廃止され、徐々に男性も増えている仕事です。看護師になるには、看護大学、看護短大、看護専門学校など看護師養成課程で教育を受けて国家試験に合格するか、准看護師として働いて国家試験の受験資格を得るかのどちらかの方法になります。看護師国家試験の合格率は90%前後で、ほとんどの人が看護師になることが可能です。なお、准看護師は都道府県知事免許で国家資格ではありません。 

●視能訓練士(視能訓練士法)
 視能訓練士の仕事は、視機能検査や視機能回復のための矯正訓練を行うのがメインです。目の検査といえば真っ先に思い浮かぶ視力検査だけでなく、日常生活へのアドバイスや、視力回復訓練なども、この視能訓練士の仕事です。視能訓練士国家試験の合格率は、90%以上で、比較的取得しやすい国家資格です。

●歯科医師(歯科医師法)
 もちろんこの資格がなければ、歯医者さんを開業することはできません。もともと歯科医師国家試験は、受験資格のある人が受ければほとんどが合格すると言われていましたが、近年は合格率が下がり、現在は70%程度になっています。6年制の歯科大学を卒業しても歯医者になれるとは限らなくなっているのです。

●助産師(保健師助産師看護師法)
 昔はお産婆さんや、とりあげばばなどとも呼ばれていた仕事です。現在は助産院を開業している人の他、今は病院勤務の助産師が増えています。産婦人科医は男性でも問題なくなれますが、助産師は女性しか受験資格・資格取得のできない珍しい職業です。また、正常分娩しか取り上げることができません。日本で助産師になるには、まず看護大学の単位を履修か、看護師資格が必要ですが、助産師国家試験の合格率そのものは高く、80%から90%と、ほとんどの人が合格する事ができます。

●薬剤師(薬剤師法)
 高度専門職業人のひとつです。薬局や病院などで、誰もが日常的に出会う職業ですが、医薬品を開発する研究職や、麻薬取締官など幅広い職種があります。薬剤師国家試験の合格率は70%程度、真面目に勉強していればちゃんと受かるといったレベルです。

●臨床検査技師(臨床検査技師等に関する法律)
 医師の指導の元で、心電図検査やMRI、眼振電図検査、場合によっては採血などを行う仕事です。臨床検査技師国家試験の合格率は、70%前後です。エコー検査なども行うため、就職では女性が有利となっています。

●歯科技工士(歯科技工士)
 歯科医師もしくは歯科技工士しか、入れ歯や差し歯を作ることはできません。無くてはならない仕事なのですが、歯科技工士は離職率が高いことでも有名です。歯科医師から発注を受けて製作する際に、不当ともいえる安い金額で仕事をしなければいけない時もあるからです。歯科技工士国家試験の合格率は90%以上と高めですが、養成学校で2年もしくは3年学んで就職しても期待したほどの収入にはならない事が多くなっています。ただ、景気に左右されてなくなるような仕事ではないのが強みです。

●歯科衛生士(歯科衛生士法)
 歯科医師のもとで、診療の補助や歯科保健指導などを行う仕事です。男性が極端に少なく、歯科衛生士といえば女性の仕事というイメージが大きくなっています。歯科衛生士学校や歯科衛生士養成所で学ぶ必要がありますが、合格率は95%以上でほとんど不合格になる人はいないと言われています。

●救急救命士(救急救命士法)
 救急救命士は、救急車の中で患者に救急救命処置を行う事が出来ます。ただし、医師の指導の下でなければいけない、心肺停止状態でなければいけないなど制約が多く、救急車の中でしか救急救命処置ができません。ただし、東日本大震災の時には、医師による指示がなされずに行った救急救命処置は違法とはされませんでした。救急救命士国家試験の合格率は80%ほどですが、救急救命士学校か、救急隊員のための公的養成機関を履修しなければいけません。

●言語聴覚士(言語聴覚療法)
 言語聴覚士は、言語、聴覚機能に障害を持った人に対して、言語訓練などを行う仕事です。言語聴覚士国家試験の合格率は、年度によってばらつきがあるので一概には言えませんが、40〜70%程度です。

●あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゆう師等・(あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律)
 あん摩マッサージ指圧師は、一般的にはマッサージ師と呼ばれ、昔はあん摩さんなどと呼ばれていた仕事です。あん摩マッサージ指圧師は、機械や器具を用いずにマッサージや指圧などを行います。カイロプラクティックや整体がありますが、これらは民間資格です。
 はり師は、鍼治療を行う資格のある人、きゆう師は、灸を使って施術できる資格を持っている人です。一般的には、はり師ときゆう師の資格を一緒にとって、鍼灸師と名乗る人もいます。(ただし、はり師ときゆう師は別々の資格ですから、法的に「鍼灸師」という資格はありません。また、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゆう師の3資格を取って、鍼灸マッサージ師、三療師などとも呼ばれることがあります。
 これら3資格は、鍼灸養成施設や、あん摩マッサージ指圧師養成施設に入学しないと受験資格が得られません。合格率は3試験とも、70%から80%程度で、弱視の人も点字や拡大鏡を使って受験可能です。

●理学療法士・作業療法士(理学療法士及び作業療法士法)
 理学療法士はいわゆる、リハビリテーションの専門家です。作業療法士は、手工芸というイメージかも知れませんが、こちらもリハビリテーションを行う仕事です。どちらも似ている仕事に見えますが、作業療法士は、作業訓練+心のケアを行うことに重点を置き、理学療法士は運動機能の回復や維持に重点を置いている点がことなります。ですから作業療法士は精神に障害がある人を対象にすることもあります。理学療法士国家試験、作業療法士国家試験の合格率は、ともに70%程度です。

●臨床工学技士(臨床工学技士法)
 臨床工学技士は医療技術者の一種で、チーム医療にはなくてはならない、医療機器のスペシャリストです。臨床工学技士国家試験の合格率は80%前後と、比較的取得しやすい数字になっていますが、求人倍率そのものが低く、仕事を探すのは困難でもあります。